コラムColumn
執筆者プロフィール
- CFP認定者
- 1級FP技能士
- 1級DCプランナー
- 住宅ローンアドバイザー
- 確定拠出年金教育協会 研究員
- アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師
- 2024.06.06
- 投資
金融商品選びに一生使える「リスク・リターン」の本来の意味
一般に使われる「リスク・リターン」という言葉と、投資の世界における「リスク・リターン」では、少し意味合いが違います。投資の世界の「リスク」とは、「危険」や「元本割れの可能性」ではなく、「リターンの『ブレ』の度合い」のことを言います。
そして、「リターン」とは、「実際に得られた利益」ではなく、「将来予想される利益の平均値(期待値)=期待リターン」のことを言います。
このリスク・リターンの本来の意味を知っておくことは、今後の金融商品選びに一生使える知識になりますので、しっかり理解しておきましょう!
ではまず、「リターン」のことが分からないと「リスク」を理解できないと思いますので、先に「リターン」から説明します。単に、「リターン=利益」という理解でよいのですが、金融商品を選ぶときに気になるのは、「過去の利益」よりも「将来の利益」ですよね?
でも、将来の株価の値動きなどを正確に予測することはプロでも非常に困難です。なので、過去のデータから確率を求め、平均的にはこのくらいになるだろうという「期待値(期待リターン)」で考えるのが一般的です。
ちなみに、運用のプロによる期待リターン予測の一例が以下の数値です。あくまでも、JPモルガン・アセット・マネジメントという運用会社の2024年時点の予測ではありますが、日本の大型株(時価総額の大きな大企業の株式)は、今後10~15年、平均で年6.70%程度の上昇が期待できるということです。この予測どおりになるなら、日本株の先行きは明るいでしょうね。
●JPモルガン・アセット・マネジメントによる今後10~15年の期待リターン
日本国債 1.10%
先進国国債(除く日本) 2.50%
新興国国債 4.20%
日本大型株式 6.70%
先進国株式(除く日本) 5.00%
新興国株式 6.20%
出所:J.P.Morgan ASSET MANAGEMENT「2024 Long-Term Capital Market Assumptions」
しかし、実際のリターンは、必ずしも予測どおりにはなりません。期待リターンから「ブレる」可能性があります。この「予測どおりにならない可能性」(=不確実性)が、まさに「リスク」なのです。投資における「リスク」というと、「元本割れの危険性」と思われがちですが、実は、予測以上に儲かってしまうこともリスクだと言えるのです。
つまり、実際のリターンが、予測から大きく「ブレる」可能性があるものはリスクが大きく、予測から「ブレない」ものはリスクが小さいわけです。
ではなぜ、予測以上に儲かる可能性も「リスクが大きい」と言うのでしょうか。その理由は、「ブレの大きい商品」ほど、「多くの人が避ける」から。
例えば、国内株式でいうと、1年間で大きく動く年には、50%以上も値上がりしたり、30%以上も値下がりしたりします。国内株式の平均的なリターンは5~7%。でも、短期的には30%以上も損をする可能性があるのです。
そんな国内株式に、「全財産を賭けよう!」とは思わないですよね?
「ブレの大きな商品は、多くの人が避ける」=「リスクが大きい」
「ブレの小さな商品は、多くの人が嫌がらない」=「リスクが小さい」
というわけです。
ちなみに、金融商品の説明資料や運用レポートなどに「標準偏差○%」とあったら、それがリスクの値です。この数値が大きいほど、リスクが大きいことを意味しています。
そして、「リスク・リターン」の度合いは、金融商品によって異なります。簡単な理解としては、債券のように比較的値動きの小さな商品は、リスク・リターンは低め、株式のように比較的値動きの大きな商品は、リスク・リターンは高め、ということです。
「リスク・リターンの大原則」は、「大きなリターンを望めば望むほど、大きなリスクを取る必要がある。リスクを嫌えば嫌うほど、小さなリターンで我慢しなければならない」です。
世の中には、ローリスク・ハイリターンの商品は存在しません!
このことは、多くの人が知っていることだと思いますが、忘れがちなので、改めて「常識」として覚えておきましょう。
そうは言っても、「可能な限り、リターンは高いほうがいい」と思いますよね?
だからこそ、リスクとの上手な付き合い方として、「長期投資」「分散投資」「積立投資」が有効だと言われるわけです。これからもリスクと上手に付き合っていきましょう。