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コラムColumn

  • 2021.09.16
  • 損害保険
  • 市川 貴博

自然災害で住宅を失ったとき、再建時に二重ローンにならない制度


近年では大規模な地震以外にも、台風や大雨、洪水、がけ崩れ等による土砂災害などで家屋が被災する自然災害が多発しています。損害保険会社が支払う保険金総額は、火災保険だけでも、2018年に約1兆3千億円を超え、2019年も相次いだ台風被害により1兆円近い金額になっています。損害保険各社は収支改善のため保険料の値上げを実施し、さらに今後の自然災害による支払い額の増大を見込み、火災保険の長期契約を、現在の最長10年から最長5年へと短縮する方向で検討しています。

保険会社がこれだけ危惧する自然災害ですから、私達個人も軽視はできません。自然災害により被災したときの対策をあらかじめ知っておきましょう。

■自然災害で住宅が全壊すると
10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等における自然災害を、被災者生活再建支援法の対象と定め、住宅を再建する場合は最大300万円の支援金が支給されます。このほかに共済や保険でしっかりと備えてあれば、元の住宅とまったく同じとはならないまでも再建は可能です。しかし、共済や保険に加入していない場合や、加入していても自然災害の補償が不担保、給付金額が少額の場合は要注意です。特に、建物が全壊しても住宅ローンが残るケースでは、全壊した建物を再建するだけの預貯金が無ければ新たに住宅ローンを借りて再建するしかなく、元々の住宅ローンと再建時に借りる住宅ローンの二重の返済を強いられ、最悪のケースでは破産してしまうこともあります。

■災害復興支援を目的とした住宅関連融資
住宅金融支援機構や銀行などの金融機関には、自然災害等で被災(※1)した個人(※2)に対して、住宅の取得やリフォームなどの災害復旧関連の借り入れを優遇する制度があります。ただし、銀行などの金融機関は営利活動が主であるため、審査が厳しくならざるを得ません。

災害復興時の住宅再建におけるポイントは二重ローンにならないよう注意することです。しかし、銀行等のホームページに掲載される復興支援目的のローンには、金利の優遇等のみが掲載されています。何の知識もないまま銀行等に相談に行けば、当初借りている住宅ローンに再建の費用を上乗せして借り換える提案をされるかもしれません。これでは、過大な住宅ローンに苦しむことにもなりかねず、復興支援とはいえないでしょう。

住宅金融支援機構のホームページには「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」について説明があり、二重ローンにならないよう災害復興住宅融資を借りる際の注意喚起がされています。事前に知識として確認しておきましょう。

■自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(以下「自然災害ガイドライン」という)
2015 年9月2日以後に災害救助法の適用を受けた自然災害で被災された場合は、自然災害ガイドラインにより被災前から返済中である住宅ローンなどの免除・減額を申請できます。債務の免除等には、一定の要件(※3)を満たすことやローンの借入先の同意が必要となり、簡易裁判所の特定調停手続を利用します。自然災害ガイドラインによる特定調停が確定する前に新たな融資が承認された場合、被災前から返済中の住宅ローンは免除・減額が認められなくなるため特に注意が必要です。

■手続の仕方とメリット
(1) 住宅ローンを借りている金融機関に手続着手の申し出をする(同意を得る必要あり)
(2) 弁護士などを通じて自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン運営機関に対し登録支援専門家による手続き支援を依頼
(3) 登録支援専門家の支援により金融機関等との協議を通じ調停条項案を作成
(4) 簡易裁判所へ特定調停の申し立て
(5) 調停条項の確定により債務整理成立

一見すると単なる債務整理に見えますが、メリットが3つあります。
(ア) 弁護士等の登録支援専門家による手続き支援が無料(※4)で受けられる
(イ) 財産の一部を手元に残せる
(ウ) 信用情報に登録されないため、他の借入についても影響がない

など、一般的な債務整理と大きく異なります。

2021年6月時点で、登録支援専門家に手続支援を委嘱した件数は1,189件、うち債務整理成立件数は556 件とハードルは高いようですが、最悪の事態を回避するための手段として知っておくと良いでしょう。ただし、本来はしっかりと共済や保険で備えておくことが望ましいのは言うまでもありません。

※1 災害救助法適用地域や防災集団移転促進事業などに限定されることもある
※2 法人に融資する金融機関もある
※3 債務者の財産や収入、信用、債務総額、返済期間、利率などの支払条件、家計の状況等を総合的に考慮する
※4 特定調停費用の負担は必要

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