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コラムColumn

  • 2020.05.21
  • 投資
  • 谷内 陽一

世にも奇妙な資産運用用語

投資や資産運用が取っ付きにくいとされている理由の一つに、小難しい専門用語の氾濫が挙げられます。とりわけカタカナの専門用語は、外国語の表記を何の工夫もなく直訳しただけだったり、逆に強引に日本語に変換しているものがあったりと、日本語と外国語双方のややこしさが混在しています。

 

そこで今回は、投資・資産運用の世界で良く耳にする珍妙な専門用語を、筆者の独断と偏見により思いつくまま列挙します。当コラムをご愛読いただいている専門家の皆さまにおかれましては、何卒寛大な姿勢でご笑覧いただければ幸いです。

 

■ドル・コスト平均法

ドル・コスト平均法とは、金融商品を購入する際に、資金の全額を一括投資するのではなく、一定金額ずつ定期的に投資する手法のことです。英語の「dollar cost averaging」から取られたネーミングですが、なぜ「ドル」と「コスト」がカタカナなのか、そして「平均」だけが日本語なのか、筆者はいつも強い違和感を覚えます。

そもそもドル・コスト平均法の本質は、一定の金額(定額)を定期的に投資(購入)することであり、じつはドル($)とは直接的な関係はありません。通貨が変われば、ユーロ平均法やリラ平均法、あるいは寛永通宝平均法や和同開珎平均法と表記しても良いのです(笑)。また、コスト(cost)とカタカナ表記すると「手数料」と誤認されがちですが、ここでは「費用=投資額」という意味なので、より正確を期すならば「ドル平均費用法」と訳されるべきです。

もっとも、わが国には「定額購入法」あるいは「定額投資法」という、たった5文字で本質をズバリ表現している用語が既に存在するので、一般のお客さまへの説明に際してはこちらを用いる方が簡便かつ適切だと考えます。

 

■元本変動型商品

確定拠出年金における運用商品の分類のうち、「元本確保型商品」は法令・通達等で明確に定義されているものの、それ以外の運用商品、すなわち投資信託などのリスク性商品については、法令上の定義はありません。そのため、「元本確保型以外の商品」「価格変動型商品」「投資信託等」などの表記が用いられているのが一般的です。

ところが近年、元本確保型商品の対義語として、「元本変動型商品」という表記が台頭しつつあります(汗)。しかもこの珍妙な用語は、投資家ブロガーの書き込みに留まらず、著名FPのコラム記事、運営管理機関(主にネット証券系)のパンフレット、さらには某投資信託協会のWebサイトへと侵食しており、始末に負えません。

当コラムの読者の皆さまには釈迦に説法ですが、元本とは「金融商品の購入・投資に充てた資金(いわゆる元手)」のことであり、資金投入後に変動するのは元本ではなく「価格(時価)」です。元本が変動(正確には「増減」)するのは、投資家が意図的に資金の追加または取り崩しを行う場合に限られます。表層的な分かりやすさを優先するあまり、本質がぼやけてしまい却って理解を妨げてしまう典型的な事例だと言えます。

 

■デフォルト

デフォルトという用語は、パソコンやスマートフォンの普及により「初期設定」という意味が広く認識されていますが、金融の世界では「債務不履行」や「焦げ付き」という意味もあり、世間一般では後者の意味合いの方がむしろ浸透しているかもしれません。

ところが、わが国の確定拠出年金では、加入者等が運用指図を行わなかった場合に予め規約に定めた運用商品により運用を行うことを「デフォルト運用」あるいは「デフォルト商品」と称しています。アメリカの401(k)で普及したしくみをそのまま直訳したものですが、確定拠出年金のような一般人向けの制度に対して、金融危機を想起させかねない呼称を用いるネーミングセンスの無さは、実に致命的と言わざるを得ません(汗)。

そんな縁起の悪そうな名称のせいか、デフォルト商品はなかなか普及が進みませんでしたが、2018年5月施行の法改正でこの仕組みがテコ入れされ、現在は「指定運用方法」が法令上の正式名称になっています。しかし、確定拠出年金の世界では今でも「デフォルト商品」という名称が普通に用いられており、筆者はそれを耳目にするたび、かつてのNHK大河ドラマ『篤姫』第20話の徳川家定(演:堺雅人)の名台詞「危ないではないか・・・」が脳内で再生されてしまいます。

 

■パッシブ運用とインデックス運用の混同

今や株式投資信託の世界では、市場指数(インデックス)の動きに連動する運用成果を目標とする「インデックス運用」が興隆を極めています。しかし、インデックス運用は、市場平均を上回る運用収益を目指す「アクティブ運用」の対義語として語られることが多く、ともすると「パッシブ運用=インデックス運用」と同一視されがちです。

正確には、インデックス運用はパッシブ運用の手法の一つに過ぎず、パッシブ運用には様々な手法があります。債券投資の世界では、満期償還時まで保有する「バイ・アンド・ホールド(買い持ち)運用」や、債券を残存期間ごとに均等に保有する「ラダー型運用」などがパッシブ運用に分類されます。パッシブ運用とインデックス運用の混同ぶりも、それこそ随所(某証券取引所のWebコラムですら!)で散見されるので、くれぐれも注意しましょう。

余談ですが、パッシブ運用とアクティブ運用との差異として、「投資判断を行うか否か」が特徴として良く挙げられます。しかし、パッシブ運用の一形態であるインデックス運用でも、「どのインデックスに追随するか」あるいは「どのインデックスをベンチマーク(指標)にするか」、ひいては「そもそもインデックス運用を行うか否か」という判断の入り込みは避けられません。つまり、パッシブ運用の本質は、投資判断のルール化・自動化により、購入・売却時に投資家の主観の入り込みを極力排除する点にあります。

 

以上、長々と書き連ねましたが、難解な専門用語・カタカナ語は、ビジネスの世界にも蔓延しています(アジェンダ、イシュー、エビデンス、クラスター、コンセンサス、スキーム、デューデリジェンスetc)。学術論文や同業者間の会話ならともかく、不特定の第三者への商品説明を生業とする皆さまにおかれましては、専門用語を噛み砕いて説明できるよう自己研鑽に努めたいものです(自戒を込めて)。

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