FPI-J 生活経済研究所長野

MENU

コラムColumn

投資信託の成績は受益者も一緒につくるもの!?


先日、ある運用会社2社の運用報告会や説明会に出席したときのメモを読み返しました。当時、投信評価会社のひとつ、格付投資情報センターが発表した『R&Iファンド大賞』(国内株式部門)で、最優秀ファンド賞及び優秀ファンド賞を受賞した投信を運用する会社です。
ちなみに、この賞は投信の一定期間の運用データをシャープレシオの数値で評価しています(*)。シャープレシオ「(リターン-リスクフリーレート)÷リスク」というのは、投信がそのリターンを得るためにどれくらいのリスクを取っているかを計測する指標のことで、一般に数値が大きい投信のほうが「運用効率がよい」とされています。つまり、リスクを抑えながらリターンをあげた投信ほど、シャープレシオは高い数値になります。

2社の運用担当者のお話には、共通点がありました。それは「運用成果はお客様(受益者)と一緒につくってきた結果」だと口をそろえていたことです。具体的には、「(基準価額が)下がった時に慌てて解約をする人が少ない」「安定的に資金が流入している」というように、受益者の行動に支えられている面も大きいということを言っていたのです。例えば、下がったときにお金が出ていかないことで、株価が安いときに買えるので、その結果、運用に有利に働くからです。もちろん、長期的に投信が組み入れている企業価値が上がり、それに伴い株価も上がるという好循環があってのことですが。

一方、設定当初は大幅に資金が流入したけれど、半年や1年経った頃から資金がずっと流出している、あるいは、あまりにも資金の出入りが激しいという投信も少なくありません。例えば、短期的に基準価額が大きく値下がりしたところで解約が殺到してしまうと、値下がりしている株式を売却、現金化して解約に対応するしかないので、さらに成績が悪化する要因になります。また、資金が継続的に流出していると、投信の運用が途中でストップされる可能性(一定の口数や資産残高を下回った場合に「繰上償還」するという条件が設定されています)もあります。それに、資金の流出が続いていたり、資金の出入りが激しかったりすると、継続的に安定的な運用を行うのはきびしいのではないでしょうか。

では、受益者の質をはかるには何を参考にしたらよいでしょうか。
保有する投信について気になる方は、投信評価会社ウエルスアドバイザー(旧モーニングスター)のサイトで、「月次資金流出入額グラフ」と「インベスターリターン」の2つを確認してみましょう。ともに、お目当ての投資信託を検索して、リターンのタブをクリックするとみられます。
「月次資金流出入額のグラフ」をみると、資金の安定性がわかります。このグラフは直近5年間の毎月の投信への資金の「流出入の傾向」が分かります。0よりも上に棒グラフがあると、購入から解約を差し引いた金額がプラス、つまり資金が流入していることになります。0よりも下に棒グラフがある場合には、購入から解約を差し引いた金額がマイナス、つまり資金が流出していっていることになります。ずっと棒グラフが0よりも上にあり、安定的に資金が純流入している投信がベターです。
資金が流入している投信が、すべて良い投信とは限りませんが、安定的な成績をあげるためのひとつの条件として、「安定的に資金が流入している」かどうかはチェックしておきたいポイントの1つです。

2つ目は「インベスターリターン」です。インベスターリターンというのは不特定多数の投資家が実際に手に入れたリターンの平均値のようなもの。投信をいつ購入し、いつ解約するかは受益者によって異なりますが、そうした受益者の実際の投資行動を反映した指標になっています(インベスターリターンそのものは不特定の投資家全員の損益を平均化したものなので、実際には1人ひとりの損益にはばらつきがあります)。
投信を購入するにあたり、高値掴みをしたり、安い時に解約したりした人が多ければ、インベスターリターンは低下します。逆に、安い時でも購入する人が多く、資金が安定して流入する投信であればインベスターリターンは向上します。ですから、投信の運用成績(トータルリターン)がよくても、実際に投資家が得られたリターン(インベスターリターン)が低い投信もあります。つまり、資産形成で長期的に資産を育てるには、よいと思える投信を選ぶことも大事ですが、1人ひとりの投資行動もそれ以上に大事なのです。
ウエルスアドバイザー(旧モーニングスター)のサイトでは、投信のリターン(トータルリターン)とインベスターリターンの差も載っているので、見比べてみるとよいでしょう。商品によってかなりの差があるのがわかります。

*「投資信託部門」は過去3年間、「投資信託10年部門」は過去10年間、「投資信託20年部門」は過去20年間を選考期間とし、シャープレシオによるランキングに基づき、最大ドローダウンを加味したうえで選考している。表彰対象は償還予定日まで1年以上の期間があり、残高がカテゴリー内で上位50%以上かつ30億円以上。選考対象は国内籍公募追加型株式投信とし、確定拠出年金専用およびSMA・ラップ口座専用以外を対象にしている。詳細はR&Iのウェブサイトをご覧ください。

お電話でのお問い合わせ

生活経済研究所長野 推進企画課

0263-88-6480

経験豊富なスタッフが、
丁寧にご要望を承ります。

受付時間 / 平日9:00〜18:00

Webでのお問い合わせ

Webからのお問い合わせなら
24時間いつでも承ることが可能です。

TOP